Boudoir de BdT

#028 Creed Cocktail de Pivoines Room Spray

Boudoir de BdT


CREEDといえば

見た目にも美しい

王室御用達の敷居の高いフレグランスブランド


そのルームフレグランスを友人から紹介された

Cocktail de Pivoinesという

芍薬をベースにした香りが気に入り

弊店のオープン当初からずっと

店の香りとして愛用してきた


毎朝 開店直前に

店内にシュッと噴きかけるのが日課となった


その日課は

自分でも気づかないうちに

香りをあらゆるところに撒き散らしていた


初めて来店してくださった方に

「路地から良い香りがして思わず入りました」

と言われ

閉め切ったショップから

どうやって香りが届いたのだろうかと

正直香り違いではないかと疑った


そしてまた買物をしてくださった方からは

「持ち帰った服がなにか匂う!」と

勢いよく電話がかかってきた

クレームだと覚悟した次の瞬間

「とても良い香りがする!!」

と絶賛され

拍子抜けしたほどだった


そんな調子で

いろんな方から日本では発売されていない

そのルームフレグランスが欲しいと

おつかいを頼まれることも増えていき

出張帰りのスーツケースの中には

必ず数本のルームフレグランスが整列していた


ある出張時

いつものようにCREEDのショップに出掛けると

ルームフレグランスは完売していると言われ

仕方ないので次回にと諦めた


その半年後

またリベンジに向かうと

この香りのルームフレグランスは

生産中止になったと言う


ミモザの香りだったらあると紹介してもらうも

断然Cocktail de Pivoinesが好ましい


香りは人の脳の記憶に直結するもの

ふと風に乗ってきた香りに

一瞬で蘇る思い出があるように

目には見えないが

このルームフレグランスもまた

数年を経て

いつしか店の顔となっていた


その後

本当の本当に

生産中止になってしまったのだということを

ようやく受け入れざるをえなかった


今では

キャンドルのみ この香りが生産されている


しかし自分でも驚くほど往生際が悪く

今だにパリ出張時には

販売していないかと確認してしまう


自分が愛用しているものというのは

知らず知らずに

生活の一部となっている


なくなって初めて

その重要さを実感する


身近なものほど

日常にあって当たり前すぎて

気づきもしない場合が多い


相も変わらず

復活するかもしれないという期待は捨てられないが

第二の店の顔探しは

気長に続けていこうと思う


h.

#027 Fox Umbrellas

Boudoir de BdT


世界で初めてナイロンの傘を開発した

英国の老舗ブランド

Fox Umbrellas


デパートで目にしていたものの

特にときめくこともなかった


10年ほど前

店舗物件を探し回っていたある日

青山の路地を散策していると

興味深い古いマンションに遭遇した


住民以外に用のなさそうな路地

店舗物件としてはまず難しいだろう

それでも

手すりやタイルの凝った作りと

佇まいに惹かれ

引き込まれるようにマンションの中へ入ってみる


薄暗い階段を恐る恐る2階へ

なんとなく

抜き足差し足・・

あまり経験のないドキドキを味わった


そこは住居というより

主にアトリエや事務所として使われていた


その一角で

マダムが小さなお店を営んでいた


一見の私たちが入店するには

少々気合を入れる必要がある閉鎖的な入り口

中には

傘やステッキ・グローブが

展示品のようにディスプレイされている


傘やグローブ

若者には敷居の高いアイテムだが

ヨーロッパでは

その専門店が当たり前のように存在している

それとはまた違うにしても

日本ではあまり見かけることのないセレクトに

静かに興奮した


その中でも

触れることすら躊躇するような

細くて上品な傘の前で友人が立ち尽していた


デッドストックの生地で

そのショップがオリジナルオーダーしている

世界に1本しかないFox Umbrellasだという


生地の柄やハンドルの色合いに惹かれた友人は

後ろ髪を引かれながらも

ひとまずその店を後にした


私もああいう素敵なものをショップに置きたい!と

まだ物件も決まっていない当時

夢物語を無理やり友人に聞かせながら

来た路地をゆっくり戻っていた


そこでふと

友人の誕生日が過ぎていたことを思い出し

あの傘をプレゼントにしよう

という提案から

先ほどのショップへ引き返した


自分のために買ったわけでもないのに

ホクホクした気持ちでいっぱいだった


これが私の記念すべき

初Fox Umbrellasであり

独立後

Fox Umbrellasを扱うきっかけを

与えてくれる出来事だった


数年後

その友人と青山を歩きながら

またあのショップへ行ってみようと

路地に入った


マンションの一角にあったはずのショップは

忽然と姿を消していた

あれは幻だったのだろうか

目の前のマンションを見ながら

そのショップがあるかのような情景が浮かんできた


今の時代

大きな商業施設にはなんでも揃っていて

一日中遊ぶことができる


洋服だって

部屋の中でも夜中でも

煩わしいことなくポチッと買い物できる時代


それは便利で楽しいけれど

私は店が好きらしい


昔バービー人形で遊んだような

お花屋さん ケーキ屋さん 洋服屋さん

どんなジャンルであれ

温度が感じられる店


小さな店が軒並み続く通り

想像しただけで楽しくなる


こうして

夢物語は

いくつになっても続いていくのだろう


h.

#026 Legged Nail File

Boudoir de BdT


昔から

ヒールや脚をモチーフにしたアイテムに惹かれ

この爪ヤスリも

ロンドンのマーケットで一目惚れし

即決で連れて帰ってきた


アンティークマーケットは宝の山

ガラクタの中に隠された宝を

自分の感覚全てをつかって探しあてる


もちろん

探している宝は他人と違うものだし

自分が探している宝すら想像できているわけではない


それなのに

宝を見つけたときの喜びは

アイス棒のアタリが出た瞬間のような

うわっ!という

あの感覚に似ている


年代物として価値があるかどうかなんて

どうでもいいことで

自分以上に年を重ね

どんな所で

どんな景色を見て

そして今

どうしてここにいるのだろうか


そんなことを考えると

アンティークとの出会いは

奇跡のようで

それだけで充分価値のあるものに思えてくる


この爪ヤスリも

初めは観賞用くらいのつもりだった


職業柄

爪の割れや ささくれは

繊細な素材をキズ物にする凶器のようなもの

そのため

爪切りと爪ヤスリは私の必需品になっている


だからといって

この爪ヤスリは

ヤスリの強度と荒さ具合からして

もう人様の爪をケアするには

相応しくないと思われる


ということで

出先の緊急事態に備えて

言ってしまえば

半分以上お飾りな存在として

日頃のお供に昇格した


21世紀なのに

どうしたって機能そっちのけで

見た目重視な私は

モノに関していえば

便利という言葉とは少し遠いところで

暮らしているかもしれない


不便は嫌いではない

遠回りすることで得ることもたくさんある


選択肢が増えた現代

自分が何を選択するのか


自ら選べる時代に生きているのだから

古きも新しきも

いいとこ取りで暮らしていきたい


h.

#025 Plastic Bag (TESCO Ver.)

Boudoir de BdT


刺繍が好き

手間のかかったものはやはり美しい


夏に向かってウキウキするこの時期

決まってビーズ刺繍が恋しくなる

これは私だけだろうか?


季節でいうと夏より冬

冬生まれだし

冬の方がおしゃれが楽しいという

単純な理由


でもやっぱり

夏はイメージからして楽しい季節

ウィンドウにも

キラキラ・カラフルなものが並び

ペディキュアにも気合いが入る


とはいえ

性別は女のわりに

キラキラという形容には

ご縁のない私


でも実のところ

キラキラものにはとても弱い

だけど

キャラ的にキラキラ全般を受け入れるには

少々問題がある


ビーズのキラキラは

セーフティーゾーン

このビーズ刺繍がアンティークになったら・・

なんてことを想像するのも楽しい


そんな私のために

友人がビーズ刺繍のアイテムを作ってくれた

TESCO仕様の布バッグ


遡ること十数年前

まだマイ・アナザースカイがロンドンだった頃

布でスーパーの買い物袋を

再現したら可愛いんじゃないかという

単純な発想から

イギリスにあるスーパーマーケット

TESCOの買い物袋を参考に

製作しようということになった


次の出張まで待ちきれず

ロンドンに住む友人の帰国の際

わざわざそれを持ち帰ってもらい

お手本が届いたところで

製作スタート


専門分野ではない刺繍も

難なくこなす友人

でもこの思いつきはなかなか面倒なことに

相手は白い布

ここに下絵を描くと

下書きの線がそのまま残ってしまう

そこで

ティッシュに下絵を描き

その上から刺繍するという方法に

ティッシュだったら最後に破れてとれるからね!と

楽しそうに難関をクリアする


メインのビーズ刺繍も

ビーズ一粒ずつ縫うとずれてしまうということで

試行錯誤の結果

三粒ずつ縫っていく

黙々と作業をし

製作開始から一週間ほどして

この15cm×20cmの極小TESCOバッグが完成した


想像以上に小さいサイズのバッグに

ビーズがよく映え

地味なようで一丁前な存在感と

手のひらサイズに凝縮された世界観が

とてもバランス良く出来ている


それからオフの日は

こればかり持って出掛けていた思い出の品


今も現役とはいえ

少々メンテナンスが必要となり

ここ数年はしばらく

ディスプレイとして休息中


たまに目が合うと

よく出来てるし

やっぱり可愛いなと

つくづく感心していたけれど

今年は

現役復帰してもらおうかしら


大切にしているものに

値段やブランドは関係ない


自分の琴線に触れるもの

それはその人にとって

どんなブランドものより価値がある


できれば私の人生と同じく

いやそれ以上

現役でいてもらえるよう

モノにも定期検診を受けていただこうと思う


h.

#024 Manolo Blahnik Strap Sandals

Boudoir de BdT


靴のロールス・ロイスだの王様だのと

異名を持つ

マノロ・ブラニク


ヒールという存在自体

魅惑的

さらに

ピンヒールともなれば尚更


ヒールは

大人の女性への憧れのひとつだろう


美しく履きこなしている女性を見たら

その人をよく知らなくても

素敵な大人の女性に違いないと

想像を膨らませてしまう


私にとってヒールは

自分のキャラと脚の形ゆえ

エベレストの山ほど敷居が高く

残念ながら成人以降も

編み上げブーツやゴツいものばかりを好み

憧れという以前に

手の届かない存在だった


大学卒業後 就職活動をしたこともなく

就いた職業柄

世の中の女性の

ヒールを履かなければならないタイミングを

ことごとく逃して生きてきた


それでも

やはり美しいものは美しい


年齢を重ねるごとに

憧れはおさまるどころか

より強くなっていき

どうせヒールを履くなら

まずはマノロ・ブラニクと決め込み

自分に似合うマノロを探すべく

試着しまくった


まずは身の丈に合ったものから

ということで

初マノロは5cmヒールのブーツだった

これなら不恰好な脚も隠れるし

1日立ちっぱなしもやってのけることが出来る


5cmの傾斜で足慣らし出来ると

意気揚々と

7cm 9cm・・12cm・・・

次の段階へいきたいところだが

ハイヒールというものは

履けば誰しも立って歩けるわけではない

直立すら満足に出来ず

歩くと

類人猿の進化過程のような自分の姿を想像するだけで

まずハイヒールなんて履いてはいけない

公害そのものである


裏方の仕事をしていたある女性は

裏方もお洒落でありたい

という思いから

ヒールで仕事をするようになった

でも運動靴との違いは歴然

そこで

ヒールを履いていることで足を引っ張らないよう

夜な夜な

ヒールで走る訓練をしたという


結果

ヒールでの仕事を確立した


スポ根マンガのような

嘘みたいなホントの

大真面目なお話

鍛錬の賜物だ


その話に奮起するものの

自分にとって 7cm以上の壁は

鍛錬で乗り越えられるとは到底思えなかった


あるセレクトショップで

一目惚れというほどではなかったのに

衝動的に連れて帰ってしまった

7cmヒールのマノロ

そう

壁を越えようと頑張る時は

目標が出来た時のみ


そしてさらに

マノロ・ブラニクの素晴らしさは

履いてこそより実感する

美しいのはもとより

何と言っても疲れ知らずで履きやすい


このサンダルをきっかけに

7cmまで許容範囲に入ったことは

スタンディングオベーションもの


そしてマノロ・ブラニクの

クラシカルなデザインは

靴自体が主張するわけでもないのに

確かな存在感と気品が漂う

ここにマノロあり

王様と言われる所以だろう


靴選びというのは

本当に難しい


よく

お洒落は我慢

というけれど

年を重ねるとどんどん我慢が出来なくなるのが現実

ましてや

靴なんて

少し痛いのを我慢したもんには

その日1日使えない人間になること間違いなしだろう


日本では

電車でも街中でも

ヒールでカツカツ歩き回る女性とたくさん出くわす

7cmで音を上げてるの?!

なんて

鼻で笑われるほどのヒールの高さを

皆さま履きこなしている


でも

本来ヒールって

ドアtoドアで生活するような方のための

優雅な履き物だろう


硬いアスファルトや

ヨーロッパのガタガタ道に

カツカツカツカツしていたら

疲れて当然なのだ


10〜20代の頃は

周りの目も気にせず

お洒落は我慢としてたけれど

年々

自分とお洒落との向き合い方が変わってきた


その年齢にはその年齢の

その時の気分にはその時の気分を

大切に

これからは

我慢ではなく無理のない

立ち居振る舞いも含めた

大人のお洒落を心がけていきたい


h.