Boudoir de BdT

#043 Maison Margiera Tabi Gloves




実用的か

趣向的か


目的にも寄るだろうが

多くのものを選ぶ時

私は後者を優先する


特に服や身に付けるもの

バッグなども含め

機能性は第一の検討材料なはず


でも気に入ったモノならば

モノに自分が合わせればいい

そんなスタンスでモノを選んできた


この足袋グローブも

形の面白さから入ったわけだけど

当初は商品名通り

足袋からインスピレーションを得たのだと

思い込んでいた


しかし

このデザインソースは

米軍のトリガーミトンたるものだろう


寒冷地帯で

グローブをしたまま銃のトリガーを引けるよう

親指と人差し指を独立させたもの


本来この形は実用的だったのだ


使う時代 場所 人 用途

同じモノでも

条件が違えば

実用的にも趣向的にも変化する


ファッションの面白さは

こういう視点の角度を変えた時に

見えてくるのではないだろうか


実際は命を賭けた重要な道具だったのに

ファッション的視点では

お洒落アイテムになってしまう


そもそも私は

銃のトリガーも引かないし

現代の日常生活で

このグローブは使いやすいのかと問われると

言葉を濁す以外ない


そして

ロンググローブって

外した時に寒いことをご存知だろうか


半袖ニットとロンググローブ

以前の記事でも書いた

お洒落に違いない組み合わせ


グローブを外せば

当然半袖になるわけで

それがまた寒空の下だったりした日には

隣にいる友人が

「大丈夫?寒くない?」

と心配して声をかけてくれる

そこでもちろん間髪入れずに

「うん!大丈夫!」

と即答する


絵に描いたような

やせ我慢である


「お洒落は我慢」

果たしてそうだろうか


第三者には

我慢をしているように見えるファッションも

その当人は

心底お洒落を楽しんでいるだけ

なのではないだろうか


そう

我慢にも値しないほど

不便を感じていないのではないだろうか

と思うのである


確かに

ロンググローブを外せば寒いし

それを寒い寒いと容易く口にしたくない

自分なりの流儀もあるし

いろんな意味でやせ我慢をしているのだけれど

それも込みで

ファッションを楽しんでいる


人生一回

その年齢のその季節は

一度しかやってこない


ならば尚更

どんどん

やせ我慢をしたいと思うのである


h.

#042 Firo Bianco Uno Royal Baby Alpaca Top




服好きには

布好きが多い


肌触りの良いものは

赤ちゃんだって

動物だって

みんな大好き


私のクローゼットには黒が多い

広げるのが面倒で

畳んであるまま

お目当の服を選ぶ時には

目をつむり

手の感触のみで探す


そうすることで

視覚の余計な情報に惑わされず

すんなり見つかるのだ


想像以上に

我々の触覚は優れている


肌に近い服を選ぶ時の基準は

まず肌触りではないだろうか


ありそうでない

自分自身の「定番カットソー」

少なくとも私は

これまで出会えなかった


定番だと思っていても

次のシーズンにその型が作られなかったり

自分の思うように定番とはいかず

もう一枚欲しかったな・・

という思いだけを残して

次の定番探しの旅に出ることになる


数年前のある日

キャリーバッグを持った

営業マンらしき男性が店にやってきた


いつもなら

キャリーバッグを開けることなく

丁重にお引取りいただくのだが

なぜかその日は受け入れることにした


そのわりに

中身への期待値は

とても低かったことを記憶している


しかし

その中から丁寧に取り出された

コットンのカットソーに

思わず言葉を失い

その素材と肌触りに静かに興奮した


気品すら感じる凛としたカットソーに対し

白髪混じりの気さくなデザイナー

更には

行商のようなスタイル


すべて違和感のある組み合わせに

良い意味で期待を裏切られたのが

FIROとの出会いだった


コットンだけでなく

ウールやカシミアなど

のちに紹介される素材は

どれをとっても素晴らしいものだった


FIROのカットソー(素材)は

どこか優しさを感じる


アルパカも

ニットではおなじみの素材だが

チクチクして苦手という方は少なくない


ところが

FIROのアルパカのカットソー

正式には

ロイヤルベビーアルパカ100%のカットソー


この仰々しい素材名を明記しているだけあり

チクリともしない

多くの方から愛される肌触りと保温性


常に真摯に

そして研究者のように

糸一本から素材作りに向き合っているからこそ

出来上がるFIROのカットソー


プラスしていくのもデザインだが

究極にマイナスされたデザインだからこそ

素材に対する大きな自信を感じられる


だからこそ私たちは

そこに信頼を置けるのではないだろうか


良いモノ

良いブランド


「良い」が意味することは

人それぞれだが

自分の感覚にリンクする「良い」と出会えた時

心の底から幸せだと思えるのである


たかが服されど服だけれど

本気で作られた服かどうかは

物づくりに関して素人な私でも

なんとなくわかる


真摯な服

私たちの見えないその背景は

壮大である


h.

#041 Antique Tin Case




海外出張のたびに

訪れる蚤の市


オープン当初は

蚤の市で買い付けた雑貨類も

販売していたけれど

今となってはそれも出来なくなってしまった


日本でのアンティークブームから

バイヤーたちが

こぞってアンティークを買い付ける


今や

質の良いアンティークは

海外の蚤の市へ行くより

日本で見つけた方が早いのではないかと思うほど


蚤の市は

ガラクタの集まりか

宝の宝庫か


答えはその人次第


私にとって

蚤の市は

新しいアイデアを与えてくれる場所


その空気に触れるだけでいい


しかし

目的を持たずに歩いていても

思わず足を止めてしまうアイテムがある


その中のひとつ

タブレットやお菓子のパッケージだったTIN缶

いわゆるブリキ缶


大きさや形も様々で

リップクリームやタブレットが入っていた小さなものから

クッキーやお菓子が入っていた大きなものまである


カラフルだったであろう缶のイラストも

時を超え

すっかり色褪せ

錆びてしまっている


しかし

その佇まいこそ

アンティークの魅力である


そうして

十数年もの間

知らず知らずと

いろんなタイプの缶を集めてきてしまった


その中でも珍しいブック型のTIN缶

どうやら

市販薬や処方箋の薬を入れて

販売されていたらしい


その必要がなくても

薬を買ってしまいそうなほど

洒落ている


あくまで推測だが

きっと当時

薬局で薬を買える人は

裕福だったに違いない


アンティークに触れると

ノベルティーや付属品であるにもかかわらず

手間やコストのかかっているものが多く

それが量産されていたことに驚く


ひとつひとつの物が

丁寧に作られ

大切にされていたことが伝わってくる


昔の人々の生活は

お洒落だったのだろう


そしてそれは

物に対してだけでなく

それを使う人々の

気持ちや時間の余裕すら感じられる


いま私たちが生きている時代に作られたものは

果たしてどのくらいのものが

アンティークとして

受け継がれていくのだろう


子供の頃に持っていた宝箱の中身は

ガラクタばかりだった


少々大袈裟だが

子供心に集めたそのガラクタには

きっと

愛や夢が詰まっていたに違いない


大人になってからというもの

クローゼットや引き出しの中身は

あの宝箱のように

それらは詰まっているのだろうか


なんでもいい

自分だけの宝物


開けた瞬間

懐かしさと愛おしさでいっぱいになる

そんな引き出しを

オトナになっても持ち続けたい


h.

#040 Moleskine City Notebook




地図

これとはなかなか

仲良くなれる気がしない


行く先を地図で確認していると

眠くなってしまうという

のび太なパターン


でも

さすがに海外ともなれば

ドラえもんもいないし

地図と仲良くせざるを得ない


でも現代には

ある意味ドラえもんのような存在がいる


行き先を告げると

インターネット上で検索し案内してくれるという

Googleの地図検索サービス


そんな画期的な現代に生きていながら

私がGoogle先生に道案内してもらうことは

この先もきっと無いだろう


一度頼ってみた時のこと

携帯画面の地図が

クルクルクルクル

画面上と現在地の確認をするだけで

すでに迷子


なににつけ

感覚重視で生きてきた私は

知らない場所へ向かう時ですら

勘のみでガンガン進みたがる性分


もちろん

大幅に間違え

大幅に引き返すという失敗もあるが

当たっていることもあるから

まんざらではない


とはいえ海外

異国の地

やはり地図は必須である


しかし

初めての土地だろうが

眼の色が違おうが

お上りさんには思われたくない


以前

ロンドンの街角で

同僚と地図を見ながら

あっちかこっちかとやっている時

ホームレスの男性が

自分の肩にかけているバッグの中へ手を入れて

お宝を探っていた


はい

現行犯

そして危機一髪である


街に出て地図を広げていると

少なからず

その土地の人間ではないということが

丸わかり


できれば

立ち止まりたくないのが本音である


そんな時

この「City Notebook」ならば

立ち止まって確認していても

あからさまに地図を見ているようには見えない


なんてスマートに

安全に

位置確認ができることだろうと

心が躍った


その上

地図というより「Notebook」としているため

その土地で

自分が必要な情報を書き込むことが出来

自分だけのガイドブックが出来上がる


おかげで

パリのノートブックは

パンパンな厚みになってきた


年季の入ったそれを見るたびに

パリで過ごしてきた時間を

思い返すことができる


同じ旅先でも

目的や季節などにより

百人百通りの見え方や感じ方があるだろう


使い古された地図には

その持ち主の足跡が

色濃く残っている


単なるツールに過ぎない地図であろうと

年月を共に過ごすことにより

自ら記した日記以上に

当時を語ってくれる存在となるかもしれない


h.

#039 The North Face Purple Label Packing Cases




バイヤーという職業柄

旅慣れていると思われることが多い


イメージ的にはそういう職業なのだろうが

本人にはまるでそういう感覚がない


特に20代の頃の私は

大真面目な自分ルールに雁字搦めで

プレッシャーも強く

自分自身のことまで全く気が回らなかった


時を経て

ようやく出張だけでなく

あらゆることへの向き合い方が

いい加減になってきた


そう

いい加減であり

良い加減でもある


脇目も振らずに仕事をしてきた人間が

いい加減になるのはなかなか勇気のいること


でも実際

いい加減になった途端

いろんな景色が飛び込んできた


同じ時間を過ごすなら

楽しい方が幸せに決まっている


自分の中で縛り付けていたものが

解けてからというもの

のびのびし過ぎなほど

出張を楽しめるようになった


そんな20代の頃の自分が

旅の支度なんて手馴れているはずもなく

出張前日に

徹夜で荷物を詰め込むのが常だった


そして30代になり

余裕が出てくると

自分のスーツケースの中身が

急に気になり出してきた


現在の出張は半年に一回

バイヤーとしては少ない方だろうが

それでもすぐに出張の時期はやってくる


このサイクルを繰り返していくと

出張時に必要なものが

嫌でも見えてくる


これまで使用していたものに

なんの不満もなかったが

少し視野を広げると

楽しいものがたくさん見えてきた


アウトドアブランドって素晴らしい


何と言っても

見た目以上の機能性に

いちいち感動してしまう


そこで

The North Face Purple Labelの

パッキングケースを知り

シーズンごとにチェックするようになった


小さいポーチから大きなものまで

4点セットになっていて

シーズンごとの色・柄に

ポーチの形や内容が少々変わる


ゼブラ柄を経て

レオパード柄のシーズン到来


やはり獣の方がしっくりくる


手に入れなければ!

と興奮したタイミングで

素敵な友人

なんとプレゼントしてくれた


ありがたき幸せ


このパッキングケースは

大・中のケースにシューズ用

そしてそれをまとめて収納できる

手のひらサイズの巾着の

4点セット


この薄いナイロン素材は

どのアウトドアショップへ行っても

用もないのに買いそうになるほど大好きな素材

さらに軽くて丈夫と

流石である


もともと

トラベル用として欲しかったわけだけど

職業柄

洋服を持ち運ぶことも多く

普段から大活躍している


しかし

私の所有物には

動物愛護団体から

卵を投げつけられそうなくらい

なにかと獣率が高い


そのため

獣同士のバッティングを避けるためにも

無地のものを手に入れたいところなのだが

このところ

パッキングケースの新作が滞っている


企画の皆さま

どうかひとつ宜しくお願い致します


何事にも

余裕を持つことは大切だと

つくづく実感する


年々

理想が変化し

いい加減な人に

より憧れる


そしてもっともっと

肩の力の抜けた

いい加減さを身につけたいと

目論んでいる


h.