Boudoir de BdT

#053 Creed Travel Atomizer




日本人は

頭のてっぺんからつま先まで

洗い過ぎらしい


ダブル洗顔

ダブルシャンプー

1日に1度ならず2度までも


香水文化の発展している国にとっては

考えにくいことかもしれない


ただ

日本人は香水より風呂が好きなのだ


確かに日本では

鼻につくほど強烈な香水の匂いに

あまり良い印象は持たれない


しかし

上手に香水と付き合っている日本人がいるのも事実

そしてまたそういう人は

不思議と佇まいから美しい


入り口はミーハーであれ

私も香水を身近なものにしたいと

数々のアトマイザーを試してみた


まずは見た目の好みから入り

実用性が伴わなければ

次へ


結果

アトマイザーとなると

実用性の方が重要だったりして

見た目に味気ないものを

持たざるを得ないこともある


しかし

そうして選んだアトマイザーですら

香水の消費量が尋常じゃない


私は

気付かぬうちに

浴びるほど吹きかけているのか・・


その上

内容が特別に秀でているならまだしも

見た目が味気ないものは

やはり上がらない


以前から気になっていたCREEDのアトマイザーは

見た目はとても美しいが

トラベルサイズとあっても

日常使いには少々サイズが大きい


また

アトマイザーというには高価で

香水初心者には

敷居が高いと感じていた


でもあらゆる物に散財した結果

いくつかの言い訳を用意できたところで

手に入れることを決意した


高さ11cmほどのケースに

紋章が全面にエンボス加工されたレザー製

見るからに贅沢品


高価なものとはいえ

正直見た目以外

何も期待していなかった


でも実際

その霧の細かさは素晴らしく

これまでのものとは別格だった


やっぱり高いだけあるんだな

なんて

ペラッペラな理由で満足し

数ヶ月ほど経ったある日

香水の減りが以前より遅いことに気が付いた


そういえば

このアトマイザー

スプレーに繋がる管が異常に細い


それに気付くと

CREEDの香水瓶の管は

他社のものに比べて

極細なものが使用されている


もちろん

揮発性や細かい点においては

他にも理由があるだろう


しかし

こんな些細なことでも気付けた時には

ニュートンが

木から落ちた林檎を見た瞬間と

同じくらい感動できたはずだと思っている


そしてもちろん

CREEDにもニュートンのような研究者がいたから

このアトマイザーも存在しているわけで

仏語を理解できないまま買い物をしていた

自分の薄っぺらさが

より如実に見えた瞬間だった


モノの価値がわかるって

こういうことなんだろうと思う


ひと言で説明できるものもあれば

体感するまで納得できないものもある


私はモノに対して

言葉をかけたくなるほど

彼らの素晴らしさに感動することがある


もちろん

作った人の努力の賜物なのだが

素人が初期段階で実感することは難しい


何においても

時間を味方につけると

未来の自分は確実に賢くなっていると思う


もし過去にタイムスリップできるなら

ニュートンレベルの発見は難しくとも

意識を向けていれば

必ず自分レベルの発見がある

そして

その些細なことの積み重ねが

大人になった貴方だと

若き頃の自分に伝えたい


h.

#052 Blason de Terre




Blason de Terre

仏語の造語で

大地の紋章という意味合い


この地に根付いていきますように

という思いを込めて


店名も

紋章も

そして

店舗の内外装も

全て

友人や家族の協力のもと

完成した


2008年8月5日

Blason de Terre 開店


その日までの

ソフトクリームのように甘い私の考えは

残暑の中

簡単に溶けていくこととなった


オープン当時のブランド数は

わずかだったが

弊店にとって必要だと考えていた三大ブランドは

なんとか揃えることが出来た


その頃の

ソフトクリーム的思考の私には

夢のようなスタートである


そんな中

日々直面する

理想と現実


私は

自身がセレクトしたブランドとは

出来る限り

長くお付合いしたいと考えている


しかし

止むを得ず

取扱いを辞めなければならない場合もある


そのまた逆に

この10年の間に

他店での取り扱いがなくなり

日本全国で弊店のみでしか

扱っていないブランドも出てくるなど

トレンドや業界の移り変わりは

目まぐるしい


服って楽しいもの

ましてや買い物なんてもっと楽しいはず

だから

単純にわくわくしたい


わくわくするショップには

面白いものがたくさん並んでいる


Blason de Terreも そうありたい


いろんな思いを拾っては捨て

今年

10周年を迎えることとなった


10年が経ち

自分だけのものだったはずの理想も

独りよがりなものではないと

実感することが出来た


歩みながら

日々変化していく

胸の中の理想と現実に向き合ってみると

必ず「誰か」の顔が浮かんでくる

行き詰まった時も

また然り


Blason de Terreは

こうして

この店を通じて知り合えた方々や

支えてくれている方々

そういう人たちがいてこそ

ここに存在している


時間が実感させてくれる思いは

計り知れない


時にテーマパークのように

時に宝箱のように

「誰か」のそんな存在になれるよう

歩み続けていきたい



この場をお借りして

Blason de Terreを成長させてくださった皆さまに

心から感謝申し上げます


h.

#051 FIRO BIANCO UNO Cotton T-shirt




「100年に一度の素材」


そう言わせたのは

いわゆる高級素材ではなく

コットンである


そしてその素材で作られた

「魔法のカットソー」


どうしたらいいのだろう

この仰々しい形容たち


販売として

責任を負えない気持ちでいっぱいになる


そんな「魔法のカットソー」とは

インド原産の超長綿を

何種類かブレンドした素材を用いて作られた

FIROのコットンカットソー


滑らかでひんやりとした肌触り

そして気品溢れる上品な艶


ただならぬコットンだということは

なんとなくご想像いただけるだろうか


そしてこの度

ほぼ日刊イトイ新聞が

O2 BETTER THAN ONE

オツなアイテムとして

FIROのカットソーを取り上げてくれるという

更には

私にまでお声掛けいただき

販売の立場から

FIROの魅力を伝えようと

対談に参加させていただいた


その中から飛び出した

責任転嫁必須の「魔法」や「奇跡」という形容の数々


少々どころか

知らん顔したくなるほど

大げさに聞こえるフレーズ


しかし今回

FIROについて

改めてデザイナーの話を聞いてみると

あながちナシでもない気がしてくる


ただ売りつけたいが為の言葉ではない

デザイナーの服づくりへの魂が

込められていると感じた結果

用いられている


実際どれほど素晴らしいモノであっても

100人いれば100通りの意見がある


でも

デザイナーが100年に一度の素材だというように

ここまで素材を主役にしたブランド自体

滅多にお目にかからない

それほどの潔さと自信を感じるのである


そんな「魔法」使いである

デザイナーの白井さんは

会話の着地点を見失いながらも

生地の素晴らしさと

だからこそ避けられない

たくさんの苦労話を

一生懸命語ってくださった


そして

いつも変わらず

私に色々なことを教えてくださる

スタイリストの佐伯敦子さん


良いものを知り尽くした

彼女のお眼鏡に叶うこともまた

大変誇らしい


和みムードの中

仕事も忘れて

楽しく

そしてFIROの良さを再認識した

貴重な時間だった


FIRO BIANCO UNO

コレクションブランドとは違い

華やかではないかもしれない


凛としているが

ツンとはしていない


私たちに歩み寄り

そして媚びることのない

普遍的なカットソー


ひとりでも多くの方に

FIROの魔法が届きますように


h.

#050 Kurikawashoten Shibu-Uchiwa Komaru




打ち水

風鈴

浴衣に団扇


暑さをしのぐ為の

昔ながらの涼を感じる工夫


今でこそ

そんな風情とは無関係そうな

団扇というアイテム


一般的な団扇の存在とは


〇〇銀行と大きく書かれた

プラスチック製のものが一家に一本


家族みんなで使いまわし

あれ?ここにあった団扇は?


いつしか行方知れず


そしてまたあの銀行へ行った時に

もらってこよう

そんな位置付けだろう


しかし大人になるにつれ

どうもそれは引っかかる


やはり団扇も

されど団扇ではなかろうか


そうはいっても

この時代

室温はエアコンで快適に保たれ

団扇の出番は

少なくなっている


しかし

そこは日本人


団扇を仰ぐ

その所作もまた

美しい日本文化のひとつのはず


熊本県の来民(クタミ)で作られている

和紙に柿渋を塗った

渋うちわ


この団扇

大切に扱えば100年経っても使えるほど

丈夫なものらしい


使っていくうちに

レザーのように

柿渋の色合いがさらに濃く

経年変化していくのもまた

魅力のひとつ


そして今もなお

400年もの歴史と伝統を受け継ぎ

一本ずつ手作りされている


そう聞いてしまうと

仰ぐ手もしなやかに

心なしか

届く風まで柔らかい気がしてくる


そのモノ自体に命が吹き込まれていると

無造作に置いても

それだけで絵になるほど


以来

我が家では

団扇への意識改革と格上げが行われた


そしてまた

今年も

涼を楽しむ季節がやってきた


暑い暑いと文句を言っても

気温は下がらない


ならばもう少し

暑いからこそ感じられる風情

現代だからこそ見える景色を

五感で感じ

楽しまなければと思う


現代流・涼の楽しみ方とは


現代人の忘れがちな余裕が

そこにありそうな気がする


h.

#049 Martinelli Apple Juice




オレンジジュースに

アップルジュース


コーヒーや紅茶と違って

ちょっとしたスリルを味わう飲み物である


果汁100%のものは別として

メニューには

オレンジジュースという情報しか

載っていないのに

欲していたものとは違う種類の

味が出てきた時の衝撃は忘れられない


妙に甘ったるかったり

逆に酸っぱかったり


子どもの頃から

安心感の塊だと思っていたオレンジジュースは

全く安心できない存在だったりする


その点

アップルジュースは

オレンジジュースほど

ドキドキする心配はない


それでも

黄金色のものが出てくることがあれば

林檎の果実そのもののようなものが出てきたりして

自らお金を出してオーダーしているのに

なぜかロシアンルーレットのような気分を

味わわされている


とはいえ

そこまでジュースを飲むわけでもない


しかし

スーパーなどで

変わった見た目やパッケージを発見すると

すぐカゴに入れてしまうタイプ


最初

Martinelliのアップルジュースも

見た目は可愛いけど味は好ましくないという

輸入物あるあるな感じも視野に入れつつ

持ち帰ってきた


結果

良い意味で予想を裏切られた


それもそのはず

100%生搾りだそうで

林檎そのものの味がする


おもてなしドリンクとしても優秀で

大抵の方に喜んでいただき

一輪挿しや何かに使いたいと

空き瓶を持ち帰られることも多い


ある時

男性にこのアップルジュースで

もてなしたところ

意外にもとても喜んでくれた


「この瓶 持ち帰ってもいいですか?

リサイクルして使います!」


男性がこれをどう使うのだろう

なかなか興味深い


そしてその夜


「早速アップルジュースの瓶に

水を入れて飲んでます!!

気に入ってます!」


なんと

灯台下暗し的な再利用法


人の発想はとてもおもしろい


そして

彼の職業はデザイナー


帰路の途中

思わず吹き出しそうな報告も

パッケージに面白みがなかったら

こういう会話は生まれない


生活の中にあるデザインは

人の心を豊かにするものだということを

ひょんなことから実感する


作り出されたモノ自体で完成ではない

服も雑貨も全て

使う人の手により

初めて完成形になるのだろう


h.