Boudoir de BdT

#052 Blason de Terre




Blason de Terre

仏語の造語で

大地の紋章という意味合い


この地に根付いていきますように

という思いを込めて


店名も

紋章も

そして

店舗の内外装も

全て

友人や家族の協力のもと

完成した


2008年8月5日

Blason de Terre 開店


その日までの

ソフトクリームのように甘い私の考えは

残暑の中

簡単に溶けていくこととなった


オープン当時のブランド数は

わずかだったが

弊店にとって必要だと考えていた三大ブランドは

なんとか揃えることが出来た


その頃の

ソフトクリーム的思考の私には

夢のようなスタートである


そんな中

日々直面する

理想と現実


私は

自身がセレクトしたブランドとは

出来る限り

長くお付合いしたいと考えている


しかし

止むを得ず

取扱いを辞めなければならない場合もある


そのまた逆に

この10年の間に

他店での取り扱いがなくなり

日本全国で弊店のみでしか

扱っていないブランドも出てくるなど

トレンドや業界の移り変わりは

目まぐるしい


服って楽しいもの

ましてや買い物なんてもっと楽しいはず

だから

単純にわくわくしたい


わくわくするショップには

面白いものがたくさん並んでいる


Blason de Terreも そうありたい


いろんな思いを拾っては捨て

今年

10周年を迎えることとなった


10年が経ち

自分だけのものだったはずの理想も

独りよがりなものではないと

実感することが出来た


歩みながら

日々変化していく

胸の中の理想と現実に向き合ってみると

必ず「誰か」の顔が浮かんでくる

行き詰まった時も

また然り


Blason de Terreは

こうして

この店を通じて知り合えた方々や

支えてくれている方々

そういう人たちがいてこそ

ここに存在している


時間が実感させてくれる思いは

計り知れない


時にテーマパークのように

時に宝箱のように

「誰か」のそんな存在になれるよう

歩み続けていきたい



この場をお借りして

Blason de Terreを成長させてくださった皆さまに

心から感謝申し上げます


h.

#051 FIRO BIANCO UNO Cotton T-shirt




「100年に一度の素材」


そう言わせたのは

いわゆる高級素材ではなく

コットンである


そしてその素材で作られた

「魔法のカットソー」


どうしたらいいのだろう

この仰々しい形容たち


販売として

責任を負えない気持ちでいっぱいになる


そんな「魔法のカットソー」とは

インド原産の超長綿を

何種類かブレンドした素材を用いて作られた

FIROのコットンカットソー


滑らかでひんやりとした肌触り

そして気品溢れる上品な艶


ただならぬコットンだということは

なんとなくご想像いただけるだろうか


そしてこの度

ほぼ日刊イトイ新聞が

O2 BETTER THAN ONE

オツなアイテムとして

FIROのカットソーを取り上げてくれるという

更には

私にまでお声掛けいただき

販売の立場から

FIROの魅力を伝えようと

対談に参加させていただいた


その中から飛び出した

責任転嫁必須の「魔法」や「奇跡」という形容の数々


少々どころか

知らん顔したくなるほど

大げさに聞こえるフレーズ


しかし今回

FIROについて

改めてデザイナーの話を聞いてみると

あながちナシでもない気がしてくる


ただ売りつけたいが為の言葉ではない

デザイナーの服づくりへの魂が

込められていると感じた結果

用いられている


実際どれほど素晴らしいモノであっても

100人いれば100通りの意見がある


でも

デザイナーが100年に一度の素材だというように

ここまで素材を主役にしたブランド自体

滅多にお目にかからない

それほどの潔さと自信を感じるのである


そんな「魔法」使いである

デザイナーの白井さんは

会話の着地点を見失いながらも

生地の素晴らしさと

だからこそ避けられない

たくさんの苦労話を

一生懸命語ってくださった


そして

いつも変わらず

私に色々なことを教えてくださる

スタイリストの佐伯敦子さん


良いものを知り尽くした

彼女のお眼鏡に叶うこともまた

大変誇らしい


和みムードの中

仕事も忘れて

楽しく

そしてFIROの良さを再認識した

貴重な時間だった


FIRO BIANCO UNO

コレクションブランドとは違い

華やかではないかもしれない


凛としているが

ツンとはしていない


私たちに歩み寄り

そして媚びることのない

普遍的なカットソー


ひとりでも多くの方に

FIROの魔法が届きますように


h.

#050 Kurikawashoten Shibu-Uchiwa Komaru




打ち水

風鈴

浴衣に団扇


暑さをしのぐ為の

昔ながらの涼を感じる工夫


今でこそ

そんな風情とは無関係そうな

団扇というアイテム


一般的な団扇の存在とは


〇〇銀行と大きく書かれた

プラスチック製のものが一家に一本


家族みんなで使いまわし

あれ?ここにあった団扇は?


いつしか行方知れず


そしてまたあの銀行へ行った時に

もらってこよう

そんな位置付けだろう


しかし大人になるにつれ

どうもそれは引っかかる


やはり団扇も

されど団扇ではなかろうか


そうはいっても

この時代

室温はエアコンで快適に保たれ

団扇の出番は

少なくなっている


しかし

そこは日本人


団扇を仰ぐ

その所作もまた

美しい日本文化のひとつのはず


熊本県の来民(クタミ)で作られている

和紙に柿渋を塗った

渋うちわ


この団扇

大切に扱えば100年経っても使えるほど

丈夫なものらしい


使っていくうちに

レザーのように

柿渋の色合いがさらに濃く

経年変化していくのもまた

魅力のひとつ


そして今もなお

400年もの歴史と伝統を受け継ぎ

一本ずつ手作りされている


そう聞いてしまうと

仰ぐ手もしなやかに

心なしか

届く風まで柔らかい気がしてくる


そのモノ自体に命が吹き込まれていると

無造作に置いても

それだけで絵になるほど


以来

我が家では

団扇への意識改革と格上げが行われた


そしてまた

今年も

涼を楽しむ季節がやってきた


暑い暑いと文句を言っても

気温は下がらない


ならばもう少し

暑いからこそ感じられる風情

現代だからこそ見える景色を

五感で感じ

楽しまなければと思う


現代流・涼の楽しみ方とは


現代人の忘れがちな余裕が

そこにありそうな気がする


h.

#049 Martinelli Apple Juice




オレンジジュースに

アップルジュース


コーヒーや紅茶と違って

ちょっとしたスリルを味わう飲み物である


果汁100%のものは別として

メニューには

オレンジジュースという情報しか

載っていないのに

欲していたものとは違う種類の

味が出てきた時の衝撃は忘れられない


妙に甘ったるかったり

逆に酸っぱかったり


子どもの頃から

安心感の塊だと思っていたオレンジジュースは

全く安心できない存在だったりする


その点

アップルジュースは

オレンジジュースほど

ドキドキする心配はない


それでも

黄金色のものが出てくることがあれば

林檎の果実そのもののようなものが出てきたりして

自らお金を出してオーダーしているのに

なぜかロシアンルーレットのような気分を

味わわされている


とはいえ

そこまでジュースを飲むわけでもない


しかし

スーパーなどで

変わった見た目やパッケージを発見すると

すぐカゴに入れてしまうタイプ


最初

Martinelliのアップルジュースも

見た目は可愛いけど味は好ましくないという

輸入物あるあるな感じも視野に入れつつ

持ち帰ってきた


結果

良い意味で予想を裏切られた


それもそのはず

100%生搾りだそうで

林檎そのものの味がする


おもてなしドリンクとしても優秀で

大抵の方に喜んでいただき

一輪挿しや何かに使いたいと

空き瓶を持ち帰られることも多い


ある時

男性にこのアップルジュースで

もてなしたところ

意外にもとても喜んでくれた


「この瓶 持ち帰ってもいいですか?

リサイクルして使います!」


男性がこれをどう使うのだろう

なかなか興味深い


そしてその夜


「早速アップルジュースの瓶に

水を入れて飲んでます!!

気に入ってます!」


なんと

灯台下暗し的な再利用法


人の発想はとてもおもしろい


そして

彼の職業はデザイナー


帰路の途中

思わず吹き出しそうな報告も

パッケージに面白みがなかったら

こういう会話は生まれない


生活の中にあるデザインは

人の心を豊かにするものだということを

ひょんなことから実感する


作り出されたモノ自体で完成ではない

服も雑貨も全て

使う人の手により

初めて完成形になるのだろう


h.

#048 Maison Martin Margiela Trench Coat




パリで開催されている

マルタン・マルジェラの回顧展


ガリエラ美術館も素晴らしく

ひさしぶりにマルジェラの世界観を堪能した


と同時に

マルジェラキチガイだった私の私物を集めたら

「ひとりマルジェラ展」が

出来そうな気すらした


その中でも

服ですか?と言わんばかりの

わかりにくい展示物


2001-02年秋冬コレクションの

トレンチコート


私が着ている姿を

何度も見ているはずの友人が

マルジェラ展のその写真を見て

これ面白い!と感嘆した


実際に体が入った状態とは違い過ぎて

一見では気づかない


持っている本人も

一瞬

新鮮な気持ちになる


マルジェラのデザインは

一見突飛なように見えるが

きちんと布の特性が生かされ

着る人により

そのシルエットも変わる


作意的であり

作為的ではない


人間も

普段のんびりした人が

スポーツ万能だったり

一番話を聞いてなさそうな新人が

仕事を始めた途端

流れを一番よく把握していたり

など


こういうギャップは

魅力的に映る


マルジェラの服もまた

力の抜け方とそのギャップが

私には魅力的だった


マルタン・マルジェラ本人が活躍していた頃

当時の本店へ足繁く通い

恥じるほどの散財を繰り返した20代


我に返った時

取り戻せないものがたくさんあるような気がして

散財した罪悪感も手伝い

頭のおかしな20代を送ってしまったと

反省でしかなかった


ただ

今となっては

当時の服を実際に肌で感じられたことは

自分の人生に大きな影響を与えていると

少々大げさだが

真剣に思うことが出来る


気狂いだったあの散財も

自分の一部


あんなに夢中になれるデザイナーは

きっと私の人生には

もう現れない


いつか

おばあさんになり

時間を持て余した頃

ひっそりと

ひとりマルジェラ展を

開催してみるのも良いかもしれない


h.