Boudoir de BdT

#031 A.F.Vandevorst Coat Dress

Boudoir de BdT


コートドレス

コートのようなドレスなのか

ドレスのようなコートなのか


実のところ

コートとドレス

どっちがメインなの?


こんなどうでもいい質問にも

検索したら答えが見つかる

便利なこのご時世


コートドレスとは

「コートのようなデザインのドレスのこと」

そして

「コートとしてもドレスとしても着用できる」


コートドレスの定義について

すっきりしたところで

もっとどうでもいい話


私はコートドレスがたまらなく好きである


実際どちらとしても活用する

でも

ドレスとして着るのは買った当初のみ

そのシーズンが過ぎる頃から

もっぱらコートとして

ガンガン着用してしまい

次のシーズン以降

ドレスとしてメインにするには

ヨレヨレすぎて気が引けてしまう


職業柄

中間の季節になると必ず聞かれること

「今アウター何着てます?」


秋口から冬に向けては

トレンチコートやレザージャケットで

問題なし


では

この梅雨の時期のように

朝晩は涼しいけど

出掛けると日中暑い

その上

見た目に軽やかさがないのは気になるし

カーディガンより

おしゃれに見えるもの


皆さんのお悩みどころ

そんな時こそ

コートドレス


ジーンズでも

普段の服装にでも

羽織るだけでニュアンスが出るのは

素材感のおかげ


コートとして作られているものは

どれだけ柔らかい素材ですと

謳われていても

やはりコート

ベースはしっかりしている


そこへいくと

ドレスがメインで作られている

コートドレスだからこそ

素材の柔らかさや滑らかさはドレスそのもの

その素材感が

雰囲気を作り出してくれる


なんなら

コートとしていつ着るの?

という質問がきそうなほど

防寒に長けてるとか

撥水加工されているとか

そういうわけではない


ひとつで二度おいしそうな

欲張りなアイテム名のわりに

なんだかんだとコートメインで

愛用している矛盾とか


名前も含めて

少々クセ者なこのアイテムに

妙に惹かれる


個人的には

使えるアイテムとして必須なものなのに

まだまだ浸透していない辺りが

不思議でならない


これからもこのクセ者と

仲良く付き合っていきたいと思う


h.

#030 Walter Van Beirendonck W-Watch Bracelet

Boudoir de BdT


アントワープ6のひとり

Walter Van Beirendonck


アントワープに

Walterという彼のショップがあった

Walter Van Beirendonckの服はもちろん

彼自身が選んだ服がセレクトされていた


表通りから路地に入ったところにある

そのショップの

少し奥まった入り口には

分厚いビニールのような仕切り


え?

これどうやって入るの?

明るいけど閉まってるの?

なんてキョロキョロしてみると

クイズ番組でしか見たことないような

直径5cmくらいの赤いボタンを発見


コレ・・ですか?

恐る恐る押してみると

扉代わりの分厚いビニールが

下から上に向かって

ぐるぐる巻き付けられていく


なんだこれ


海外のショップへ行くと

たまにこういう不思議な体験をする


変な機械音に包まれ

しばしの間

巻き付けられていくビニールに

釘付けになる


我に返り

ようやく店内に入ると

壁という仕切りは存在しない

倉庫のようなだだっ広い空間


天井からワイヤーのようなもので吊るされた

ドーナツ型のカウンターが

ゆらゆらと揺れている


カラフルな鉄骨の枠組みが一つの仕切りとなり

各デザイナーの服がディスプレイされ

ペダル式のボタンを踏むと

クリーニング店のように

服の掛かったラックがぐるぐる回り出す


ショッピングというより

遊園地にいるような感覚で店内を歩く


楽しく

驚きのある店内は

Walter Van Beirendonckの

コレクションのようだった


ひと通り楽しんで帰ろうとした時

メンズ仕様の大きな文字盤に

編み込みやビーズ刺繍などが施された

腕時計型のブレスレットに一目惚れした


使えるかどうかというより

所有欲が先行し

即決でお持ち帰り


その後

自分でも意外なほど愛用することとなり

今では壊れてもらっては困ると

細かいメンテナンスに気を配るほどとなった


現在は

アントワープ王立芸術アカデミーの教授でもある

Walter Van Beirendonck


残念ながら

遊園地のようなショップは

もう閉店されてしまったけれど

ファッションに衝撃を受け

コレクション誌のページを

ドキドキしながらめくっていたあの頃

私の記憶には欠かせないデザイナーの一人


大人になり

少しは買い物の分別がつくようになってきた

とはいえ

他人から見れば

「使えないもの」を買うことも多いらしい

それを失敗と呼ぶかは

その人次第


私はこれからもどんどん

失敗のようで

大自己満足な買い物を

繰り返していきたいと思う


買い物まで賢くしようだなんて

私にとっては

ストレス以外のなにものでもない


h.

#029 Nantucket Basket

Boudoir de BdT


唯一フォーマルな席で許される

バスケット界のエルメスとも呼ばれている

ナンタケットバスケット


米国のマサチューセッツ州の南に位置する小さな島

ナンタケット島


捕鯨基地であったその島の漁師達が

フィリピンや南の島から持ち帰った籐と

鯨から採れる油を入れる樽を作る技術が出合って

作り上げられたもの


ナンタケット島に行ったことのない私は

当然その島の伝統工芸など知る由もなかった


きっかけは

ある方が持っていた上品なバスケット

ご自身で制作されたと伺い

全身に制作意欲がみなぎった


しかしそれを作るためには

教室に通わないといけないらしい

私の制作意欲がサーっと引いていく


そこで

ドラえもんのような存在の

友人の顔が浮かんだ


夜中の通販番組のごとく

いかに素晴らしいバスケットなのかを力説

ぜひ作って欲しいと説得した


一緒にその教室を見学に行き

彼女が通うことに決定


のび太くんだと思っていた自分は

実のところジャイアンかもしれないと

改めて鏡に映る自分を眺めてみた


色々なデザインやサイズがあり

ナチュラルの籐の色が

時を経て飴色になるのを想像するだけで

わくわくする


しかも

黒いバスケットも存在するらしい


やはりアパレル思考の我ら

日常使いとして

いかにモードなバスケットを作るか

というコンセプトを掲げ

使いやすい大きさとか

そういったことは一切無視

見た目の可愛さのみでデザインを決定した


基礎を学び

本当に作りたいものを形にすべく

良いタイミングで

良い先生にも巡り会うことができ

次のステップへ進むこととなった


分野は違えど

さすが物作りのプロ

ナンタケットバスケットの制作だけでは飽き足らず

バッグの留め具や蓋の上に乗せる飾りも作りたいと

象牙教室にまで通い始めた


初めのうちは

彼女がせっせと教室に通っている姿に

若干の罪悪感を感じていたものの

楽しんでいる様子を見て

あっさり解消

むしろ良いところへ導いたのではないかと

清々しさまで感じられた


その上

教室の生徒さんにも

象牙や水牛の装飾・レザーの持ち手の製作を

頼まれるなど

みんなのヒーローになっていた


そうこうして出来たモードなバスケット

納得がいかない部分は何度もやり直し

ようやく完成までに辿り着いた


楽しんでいた彼女も

さすがにもうしばらくバスケットは作りたくないと

お腹いっぱいのご様子


それもそのはず

本来

縦横共に籐で編まれているものだが

彼女が使用したのは

ウォールナットの木のステーブ(縦地)に

通常の籐より硬い

黒いケーン(横地)だった


80〜100本ほどの木を

均一の細さに削ってから茹で

柔らかくしてから曲げていく

想像以上に

地味で手間のかかる下準備を行っていた


しかし

出来上がったバスケットは

素人が作ったとは思えないほど

素晴らしい出来栄えだった


実際に購入するとなると

とても高価なナンタケットバスケット

その地域では

代々受け継がれていくものらしい


修繕しながら

何代にもわたり大切にされていく

価値のあるもの


これから先

自分の知らない未来に

どんな様子で引き継がれていくのか

ひとつのモノが世代をつなぐ


未来のおとぎ話を想像するようで

夢は膨らむのである


h.

#028 Creed Cocktail de Pivoines Room Spray

Boudoir de BdT


CREEDといえば

見た目にも美しく

王室御用達の敷居の高いフレグランスブランド


そのルームフレグランスを友人から紹介された

Cocktail de Pivoinesという

芍薬をベースにした香りが気に入り

弊店のオープン当初からずっと

店の香りとして愛用してきた


毎朝 開店直前に

店内にシュッと噴きかけるのが日課となった


その日課は

自分でも気づかないうちに

香りをあらゆるところに撒き散らしていた


初めて来店してくださった方に

「路地から良い香りがして思わず入りました」

と言われ

閉め切ったショップから

どうやって香りが届いたのだろうかと

正直香り違いではないかと疑った


そしてまた買物をしてくださった方からは

「持ち帰った服がなにか匂う!」と

勢いよく電話がかかってきた

クレームだと覚悟した次の瞬間

「とても良い香りがする!!」

と絶賛され

拍子抜けしたほどだった


そんな調子で

いろんな方から日本では発売されていない

そのルームフレグランスが欲しいと

おつかいを頼まれることも増えていき

出張帰りのスーツケースの中には

必ず数本のルームフレグランスが整列していた


ある出張時

いつものようにCREEDのショップに出掛けると

ルームフレグランスは完売していると言われ

仕方ないので次回にと諦めた


その半年後

またリベンジに向かうと

この香りのルームフレグランスは

生産中止になったと言う


ミモザの香りだったらあると紹介してもらうも

断然Cocktail de Pivoinesが好ましい


香りは人の脳の記憶に直結するもの

ふと風に乗ってきた香りに

一瞬で蘇る思い出があるように

目には見えないが

このルームフレグランスもまた

数年を経て

いつしか店の顔となっていた


その後

本当の本当に

生産中止になってしまったのだということを

ようやく受け入れざるをえなかった


今では

キャンドルのみ この香りが生産されている


しかし自分でも驚くほど往生際が悪く

今だにパリ出張時には

販売していないかと確認してしまう


自分が愛用しているものというのは

知らず知らずに

生活の一部となっている


なくなって初めて

その重要さを実感する


身近なものほど

日常にあって当たり前すぎて

気づきもしない場合が多い


相も変わらず

復活するかもしれないという期待は捨てられないが

第二の店の顔探しは

気長に続けていこうと思う


h.

#027 Fox Umbrellas

Boudoir de BdT


世界で初めてナイロンの傘を開発した

英国の老舗ブランド

Fox Umbrellas


デパートで目にしていたものの

特にときめくこともなかった


10年ほど前

店舗物件を探し回っていたある日

青山の路地を散策していると

興味深い古いマンションに遭遇した


住民以外に用のなさそうな路地

店舗物件としてはまず難しいだろう

それでも

手すりやタイルの凝った作りと

佇まいに惹かれ

引き込まれるようにマンションの中へ入ってみる


薄暗い階段を恐る恐る2階へ

なんとなく

抜き足差し足・・

あまり経験のないドキドキを味わった


そこは住居というより

主にアトリエや事務所として使われていた


その一角で

マダムが小さなお店を営んでいた


一見の私たちが入店するには

少々気合を入れる必要がある閉鎖的な入り口

中には

傘やステッキ・グローブが

展示品のようにディスプレイされている


傘やグローブ

若者には敷居の高いアイテムだが

ヨーロッパでは

その専門店が当たり前のように存在している

それとはまた違うにしても

日本ではあまり見かけることのないセレクトに

静かに興奮した


その中でも

触れることすら躊躇するような

細くて上品な傘の前で友人が立ち尽していた


デッドストックの生地で

そのショップがオリジナルオーダーしている

世界に1本しかないFox Umbrellasだという


生地の柄やハンドルの色合いに惹かれた友人は

後ろ髪を引かれながらも

ひとまずその店を後にした


私もああいう素敵なものをショップに置きたい!と

まだ物件も決まっていない当時

夢物語を無理やり友人に聞かせながら

来た路地をゆっくり戻っていた


そこでふと

友人の誕生日が過ぎていたことを思い出し

あの傘をプレゼントにしよう

という提案から

先ほどのショップへ引き返した


自分のために買ったわけでもないのに

ホクホクした気持ちでいっぱいだった


これが私の記念すべき

初Fox Umbrellasであり

独立後

Fox Umbrellasを扱うきっかけを

与えてくれる出来事だった


数年後

その友人と青山を歩きながら

またあのショップへ行ってみようと

路地に入った


マンションの一角にあったはずのショップは

忽然と姿を消していた

あれは幻だったのだろうか

目の前のマンションを見ながら

そのショップがあるかのような情景が浮かんできた


今の時代

大きな商業施設にはなんでも揃っていて

一日中遊ぶことができる


洋服だって

部屋の中でも夜中でも

煩わしいことなくポチッと買い物できる時代


それは便利で楽しいけれど

私は店が好きらしい


昔バービー人形で遊んだような

お花屋さん ケーキ屋さん 洋服屋さん

どんなジャンルであれ

温度が感じられる店


小さな店が軒並み続く通り

想像しただけで楽しくなる


こうして

夢物語は

いくつになっても続いていくのだろう


h.