Boudoir de BdT

#019 Rue Jacob

Boudoir de BdT


パリ

といえば


エッフェル塔

凱旋門

ノートルダム寺院

ルーブル美術館


多くの人は

華やかなイメージを

真っ先に思い浮かべるだろう


私も初めはそうだった


主にロンドン出張を繰り返してきた私は

ロンドン同様

パリへの期待も高かった


ところが

パリ出張に行き始めた頃

パリがとても嫌いだった


ツンと澄ましたフランス人

妙に気高しい建造物の数々

ぼそぼそとした早口言葉のようなフランス語


街のパン屋に入れば

1・2・3という英語さえ

受け入れようとしてくれない


なんて冷たい街だろう

そう思っていた


それでも

半年に一度

ファッションウィークはやってくる


いちセレクトショップのバイヤーなんて

ファッションウィークといっても

華やかな仕事をしているわけではない

東京でもパリでも

やってることは同じ

時間に追われるのも同じ

地味な作業の繰り返し


その心境が変わったのは独立後だった


それまでは

歩くスピードも早く

どんどん景色が流れていく

目的地に着いて仕事をして

また移動する


でも独立後

少しずつ街の様子が目に飛び込むようになってきた

威圧的に感じていた建造物の美しさに

思わず立ち止まる


出張という仕事で来ている私は

立ち止まる

という行為を勝手に禁じていた

それは言葉通りの意味と

自分の気持ちの上でもそうだった


ふと立ち止まってみる

いつもよりゆっくり歩いてみる


東京と変わらないと思っていたパリの空気が

なにか違うと感じた


縁というのは不思議なもので

出会うタイミングも縁のひとつだと私は思っている


弊店のお客様

彼女はアパレルでもないのに 服に詳しく

そんな古くてマニアックなデザイナーのことまでご存知ですか?

というほど

初対面から会話が進み意気投合した

そんな彼女と知り合って間もなく

しばらくパリへ移り住むという


最初はそこまで重要なことだと思っていなかったけど

あれからもう7年

彼女のいないパリは考えられないほど

パリの住民として

半年に一度 私たちを迎え入れてくれる


そして彼女から教えてもらうパリは

パリの日常を垣間見るような

自分もパリに受け入れられているような気持ちになれる


当たり前に

住むのと滞在するのとはわけが違う

どんなに不自由で大変な苦労をしても

この景色には変えられないと

夜のセーヌ川を眺めながら彼女は言う


出会った当初

パリの中でもとても好きだという通りを

彼女が話してくれた


サンジェルマン・デ・プレ教会の裏に

Jacob通りという500mにも満たない路地がある

決して美しいわけではないその通りの良さを

初めは正直 理解できなかった


小さな通りには

画廊や本屋 雑貨屋 骨董屋 セレクトショップやホテルなどが

ひしめき合っている


実は有名なセレクトショップだったり

食器屋だったり

ラデュレまである


普段は観光客らしき人々をあまり見かけない

とても不思議な通りだ


この不思議な通りに毎回訪れるようになり

この通りの気負わなさと空気感に

思わずただいまと言いたくなってしまう


あれほど嫌いだったパリの景色が

こんなにも違って見えるとは

私にも少しずつ浸透してきた


頼まれてもいないけど

あなたのアナザースカイは?

と聞かれたら

パリです

と即答するだろう


立ち止まる

今では意識的にそうしてみることがある

すると

自分の知らなかった世界が見えてくる


何事も一片から物事を見て

わかったつもりでいると大火傷をする


そして今回のパリ出張では

だいぶ苦しい初体験をした

そこで気づかされたことも多々

マイナスからの発見もある


次回はこの経験を胸に

また一心してパリへ

そして JACOB通りへ戻りたいと思う


h.

#018 Monoprix Sac

Boudoir de BdT


最近少なくなってきたとはいえ

なかなか治らない

収集癖


私の場合

集めようというより

結果 集まっちゃったタイプ


ここ数年

パリ出張で癖付いたのが

このエコバッグ


パリのスーパーマーケット

Monoprixのオリジナル


パリのホテルに着いて

まず することといえば

近所のMonoprixへ飲料水の買い出し

1.5Lのペットボトルを数本買い込む


初めは

エコバッグなんぞ持っていなかったので

ビニールのレジ袋を買うよりはと

レジ前に積まれたエコバッグを手に取ってみたことが

きっかけとなった


これが意外にも

使ってみると丈夫で

コンパクトになり 使い勝手が良い


さらにこのエコバッグ

行くたびに必ず新作が並んでいる


半年に一度しか行かない私には

新作のサイクルは不明だが

カラフルなものから柄もの

さらには

ファッションブランドとのコラボまで


しかも

偶然なのか

リサーチされているのか

トレンドカラーに寄せてきたりしているから

何の気なしに訪れると

それだけでなんだかアガる


おまけに1.5〜2.0ユーロというお値段


もういくつも持っているというのに

新色が出たことにより

ついつい増えていく始末


ショップの紙袋など

シーズンごとに企画・展開されているものは

見ているだけでも楽しくて

心を掴まれる


心動かされるものというのは

必ずそこに

誰かの思いが隠れている


そうして今回もまた

何色のエコバッグが待っているだろうと

密かにわくわくしながら

Monoprixに出かけたいと思う


h.

#017 Ann Demeulemeester Tank Top

Boudoir de BdT



ANN定番のリブタンク


実はこれ

友人からの預かりもの


友人が弊店で購入

しかし

着てていいよーと

私の手元に戻ってきた


着てていいよと言われたものの

人から借りた高級タンクを

どうしたものか・・


そんなことに悩んでみたのは

初めの一週間ほど

それ以降は借りている事実も忘れ

自分のもののように扱っていた


だいたい

一枚で着られないのに一丁前なお値段のコチラ

どうして着たらよいものか?


コレクションなんかで見ると

一枚で着たり

ジャケットの下に着て

透けたり

見えたり


でも

リアルに透けたり見えたりしてたら捕まります

ここ日本だし


そうした場合

これだけ薄い素材

下にタンクトップを重ね着して

透けない 見えない ことを確認した上で

ジャケットのインナーに着てみる

どのみち

ジャケット脱げないし

そのわりに 潔さ欠けてるし

なんだか切ない


そこで

鏡の前の自分と向き合うお時間


結果

裾から見える重ね着アイテムとしてコーディネート


普通のセーターと黒いパンツの間に

タンクトップという箸休め

セータの裾から見えるタンクトップにより

なんてことなかった組み合わせに

奥行きが生まれる感じ


もっと言ってしまえば

タンクトップの裾20cmがあるかないかで

おしゃれに見えるかどうかまで

決まってしまう


服を着こなすってすごく難しい

また

いかに自分らしく着こなせるか

これきっと

永遠のテーマ


あの人ちょっと違う

そう思われたい

そんな時

隠し味のような役割として

意外にも重宝するアイテム


だからこそ

素材や色・柄にも拘りたい

単なるインナーじゃない

存在感のあるコを選びたい


先日うっかり

「もらったタンクトップをさー」

と話したら

「あれ あげたことになってんだ?」

と含んだように返してきた友人


何年も

しかもオールシーズン結構な頻度で

私が着ていることは

百も承知のはず


え 返します?

いや 要りません


この場をお借りして

よれよれですけど いつでもご返却可能です


主役級ではないけれど

縁の下の力持ち的アイテム

裾20cmのために

お金を払っていると言っても過言ではない


この借り物をきっかけに

私のクローゼットに

高級タンクがどんどん嫁入りしてきたことは

いうまでもありません


h.

#016 Hermès Remix Card Case

Boudoir de BdT


マルジェラがエルメスのデザイナーだった頃のコレクション


ある男性が

このカードケースを財布代わりに

パンパンに膨らませて使っていた


元々ブラウンだったであろうレザーも

真っ黒に使い込まれ

いわゆる財布といえば

から想像できる形式からはかけ離れた雑な扱いに

ある種のカルチャーショックを受けた


私はオフの日だったら

ポケットに財布を入れ手ぶらで出掛ける


20代の頃は特に

男性の服や持ち物に憧れ

かっこいい女性になりたいと思っていた


その頃憧れた かっこいい女性像

いま思う かっこいい女性像

明らかに違っているが

おそらく根底は変わらない


それから 私には珍しく

この財布を手に入れたのは

しばらく経ってからのことだった


意外にも

日常的に使うようなアイテム

特に財布などは

使い慣れると変える気すら起きない


そのため

その男性の財布に ときめいたものの

それは財布にというより

使い込まれた様に惚れ込んだ

という風に解釈していた


あるパリの出張時

普段ならあまり入ることのないエルメスに入店

するとケースの中には

色とりどりのソレが並んでいた


当時は私の身近なところで持っている人も多かったので

特に興味がないはずだったのに

うっかり

オーストリッチと目が合った


やばい


色は ベージュ 赤 黄緑 の3色

使い込んだことを考えたら

当然 ベージュ

なのに

きれいな朱赤に後ろ髪を引かれる


でも財布の赤ってよくないんですよね?

そういうの気にしないでしょ?

そんなことはないですよ

でも 可愛い と 迷信 を比べたら

断然

可愛い という事実をとりますよね


ということで

単なる衝動で

赤のオーストリッチを連れて帰ることに


しかし

元々カードケース

仕切りがぎっしりすぎて使いにくい


家に帰って早速

真ん中以外の仕切りをチョキチョキ

すっきりしたところで

晴れて 私の相棒に


それから15年以上使い続けた

最近のお悩み


独立してから

ある時を境に

お札を折れなくなりました


この財布

まぁ 財布ではないので

お札は二つ折りで

かろうじてファスナーが閉まるといった具合


オープン当初 アパレル経営者のお客様から

貴重なアドバイスをいただいた


レジには新札を用意しておきなさい

それが出来ないときには

お札にアイロンをかけなさい


それからというもの

お札に気を配るようになると

自分の財布の中身も気になり始めてくる


新札しか手元になかった時

この財布に入れるために

諭吉さんを折らなければならないのか

諭吉さんほか

英世さんや一葉さんに無礼ではなかろうか


お札にまで礼儀を払うほどに


そんな

お札を折れない私が

お札を折らなければならない財布を使用


年々 矛盾が増えてくる


そこで明らかな解決策

そう 長財布を買えばいいんです


でも

「とりあえず」という買い方ができない私は

矛盾のバカバカしさを感じながらも

新札は別のケースに入れ

どうしても財布一つで出掛けなければならない時には

ごめんなさい!と

諭吉さん方にひと言詫びて うっすら折りたたむ


多少の罪悪感と不便を感じつつも

やはり好きなモノに囲まれているという

幸福に勝るものはない


この行方

いずれまた

ご報告させていただきます


h.

#015 Santa Maria Novella Sapone al Melograno

Boudoir de BdT


イタリア フィレンツェにある

現存する世界最古の薬局

サンタ・マリア・ノヴェッラ


映画ハンニバルの舞台となり

その後は観光ガイドに載るほど有名となった


この時すでにハンニバルが公開していたのかどうか

いずれにせよメジャーな映画に疎い私の

サンタ・マリア・ノヴェッラとの出会いは

知人からのプレゼントがきっかけだった


まず

なにより感動したのは

そのパッケージ

プロダクトごとに拘った外箱に包まれ

特別感が漂っている


北青山のビルの一角に

ひっそりと路面店を構えていた

おそらく 日本では

まだその一店舗のみだったのではないだろうか


休日

意気揚々と出掛けてみたものの

私のような若者が

気軽には入れない重たい空気を

入り口付近から漂わせていた


恐る恐る

足を踏み入れてみる


忘れもしない

気持ちのよい晴れた日

それなのに

店内に入った途端

一切の光も音も遮断された異空間

物凄い重圧感


明らかに遥か人生の先輩であろう

スタッフの女性

口角を1ミリたりとも動かさず

いらっしゃいませと

会釈された


ダークファンタジーにでも

迷い込んでしまったかのような感覚


それでも

パッケージの美しさやプロダクトに圧倒され

店内でうっとりしていると

次から次へと

マダムや紳士が来店

一言二言 話しては

用を済ませ

ありがとうと立ち去る


本当にここは日本なのか


わずかな滞在時間に

あらゆる意味で場違いな自分を肌で感じ

すごすごと退散


それなのに

自分が淑女の仲間入りでもしたかのような

高揚感を土産に帰路についた


それからしばらく経ち

フィレンツェに行ってきたという

学生のお客様からお土産を戴いた


差し出された紙袋を見るなり

相手が恐怖を覚えたというほど

大きな悲鳴を上げた


確かにハンニバル公開後

フィレンツェ旅行のお土産に

サンタ・マリア・ノヴェッラは

珍しくもない話だろう


でも私にとって

ファンタジーだかダークファンタジーだか

わからないほどの異空間にあった贅沢品は

紙袋すら光り輝いて見えた


お土産は

ザクロの石鹸と黒いパスタ

なぜ

そのセレクトだったのか


「妖しげな感じが ぽかったから!」

無邪気な笑顔でコメント


それって

黒い布に包まれた部屋で

真っ黒い衣装を着て

グツグツなにか煮込んでそうなイメージ

ですよね


ある種のダークファンタジーを

自分も醸し出していたのかと妙に納得したところで

気を取り直し

ありがたく そのお土産を開けてみた


箱を開けた瞬間

重たく甘酸っぱいような強い香りが迫ってくる


この石鹸を使った次の日は

香りを纏っているかのように

ふんわりと

自然に良い香りが香る


それ以来

ザクロの石鹸は私の愛用品となった


よく

街を作るのは

そこに住んでいる人々だというけれど

店もお客様が作っていくものだと思う


どんな方が来て

どんな会話がなされているのか


そこでしか味わえない世界観

独特の空気感

北青山にあるサンタ・マリア・ノヴェッラは

それはそれは素敵な紳士・淑女と共に

年月を経て

作り上げられたのだろう


今は感じることのできない

その時 感じた思い


背筋を伸ばして目を閉じ

記憶にタイムスリップしてみる


いつか

だれかのタイムスリップの舞台に選ばれるような

店になっていきたい


h.