Boudoir de BdT

#038 Taschen Travel Books




初めて行く海外

そういう時にまず

手にするガイドブックといえば

「地球の歩き方」だろう


創刊以来

今では100都市以上に及ぶらしい


平和で豊かな日本に暮らしていると

無いということに憤慨しても

有るということへの感謝は

なかなか気付きにくい


地球の歩き方もそう

自分が行きたい国の本は

あって当たり前くらいに思っている


学生時代

海外に行く予定があるわけでもないのに

立ち寄った本屋で手にした

Taschen社のガイドブック


Taschenとは

ドイツの出版社

アートブックのトップブランドともいわれ

ファンも多い


厚みのある紙面にやや荒い画質の写真

説明文は一切なく

3ヶ国語による必要最低限のインフォメーションのみ

地図はイラストと

あくまでビジュアル重視


ショップ紹介も

お決まりの外観や内観全体の写真は

極めて少なく

特徴的な部分が

マニアックにクローズされている


ガイドブックらしからぬ

その潔さは

各都市のアートブックを見ているよう


そもそも

このガイドブックのタイトルになっている都市数は

両手の指に収まるほど


選りすぐられた

といえば聞こえはいいが

Taschen社の気まぐれのようで

地球の歩き方とは

スタンスが大きく違う


そのTaschen社の

ガイドブックの世界から

学生の頃の私は

たくさんの夢やアイデアをもらった


なにかに悩んだり迷ったり

自分の中で停滞している時

本から学ぶことは多い


しかし

ガイドブックに

そんな役割まで期待していない


それなのに

今でも

この本の中には

新しい発見がある


秋風の心地よい頃

異国の空を

ぼんやり思い浮かべながら

現実逃避をすることも

読書の秋だからこそ

許されるひとときかもしれない


h.

#037 Maurizio Pecoraro Short‐sleeved Knit




夏の終わり

秋に近づくと

その時期にしか楽しめない

コーディネートを想像し

心待ちにしてしまう


季節でいくと

秋のコーディネートが

一番お洒落ではないかと思っている


ただ残念なことに

最近の日本の気候は

秋を飛び越えてしまうことも

しばしば


それでも

わずかな秋を見逃さぬよう

その時をじっと待ち望む


そこで秋に着たいアイテムとして

真っ先に思い浮かぶのが

半袖のタートルネックニット


服を着る上で

肌の露出とバランスは

重要なポイント


例えば

デニムの裾のロールアップや

シャツの袖をまくるなど

同じアイテムでも

そのまま着用した時より

肌の見せ方を少し変えるだけで

お洒落に見えるか否かを決定付けるほど

差が出るものである


タートルネックなのに半袖

半袖なのにタートルネック

防寒にも防暑にも向いていない


物心ついた頃から

ファッション誌の中で目にする

半袖のタートルネックニットにロンググローブ


子供ながらに

最強のコンビネーションだと

確信していた


Maurizio Pecoraroのニットは

ウールベースに

前身頃にはシルクとモヘアのニットを

重ねたデザイン


しかも

黒いシルクに黒いモヘア

なんとも控えめで贅沢なデザイン

一年のうちに活躍する頻度も控えめなものの

こういうアイテムこそ

欠かせない


よく

実用的ではないアイテムに対して

なかなか着る機会がない

と耳にする


先日

友人との雑談の中で

機会があれば・・

という文句は

この先一生その機会はない

という意味だろうと結論づいた


機会は

待っていてもやって来ない


四の五の言わず

ここだ!と感じた時こそ

楽しむべきである


h.

#036 Calvin Klein Underwear

Boudoir de BdT


特に夏の猛暑などには

インナーを着ることすら

うっとおしいと思うことがある


だからこそ

素肌に一番近いものは

一番心地良いことが絶対条件


実用的なインナーの代表選手として

Calvin Kleinは秀逸

素材・着心地・見た目

どれをとっても

ストレスフリー


先月原宿に

Calvin Kleinのアンダーウェア専門店がオープンした

特にウィメンズのインナーを

日本で手に入れることは困難で

強いて言えば

コストコでまとめ買いが出来るくらいだろう


そのため

海外出張へ行く度に

買い込むこともしばしばあった


普段

モノトーンの服が多い私は

当然のようにインナーもモノトーンだった


20代初めの頃

同じようにモノトーンの服装を好む

スタイリストさんから

「インナーも黒っぽい色が多いでしょ?」

と意味ありげに突つかれた


「ダメなのよ!

暗いものばかり着ていると

幸せになれないんですって!

この前忠告されたの!

だからあなたも

せめてインナーだけでも

明るい色のものを買いに行って!」

と面白いアドバイスをいただいた


そういえば

美輪明宏さんも

同じようなことを言っていたな


インナーに明るい色・・

なんとも抵抗があり

せいぜい寒色系で色を加えた程度で

やっぱり基本モノトーンで過ごしていた


ある時

絶対に自分では手に取ることのない

鮮やかな色のインナーを戴いた


いやいやいや

ありがたくも抵抗は拭えず

クローゼットの中に仕舞い込んだままだった


元・楽天の野村監督が

連勝中

ラッキカラーのインナーを履き替えなかった

という話は有名だが

スポーツの世界では

こういったゲン担ぎにまつわる話を

よく耳にする


ある日

そっと放置されていた

鮮やかなインナーと目が合い

なんとなく

それを身につけて仕事へ出掛けてみた


ん?

その日一日

いろんなことがスムーズに進んでいた


たまたま偶然

気のせいだろう


そして数日後

またそれを身につけ仕事へ出掛けてみる


すると不思議なことに

またその日も調子が良かったのだ


単なる偶然

気のせいかもしれない


でも

インナーの色を変えてみる

たったそれだけのことなら

騙されてみるのも悪くない


その後

私のクローゼットの中には

鮮やかな色が増え続けている


最近では

自分の中で大切な日

ちょっと重要な仕事の日

そんな日には

決まって鮮やかな色を選ぶようになった


半信半疑だったものの

ゲン担ぎくらいで成果が出るなら

万々歳


となると

巣鴨の赤パンツ

あれだって

あながちないこともないのかもしれない


h.

#035 Creed Fragrance Original Vetiver

Boudoir de BdT


香り

私にとって

特別で高貴な存在


お洒落な映画に出てくる綺麗な女優は

みんな良い香りがすると思っていたし

広くてお洒落な家のリビングもまた

とても良い香りがすると思っていた


美しい女性の条件とは

いろいろあるだろうが

個人的に

香りは必須だと思っている


若い頃は

二重が良いだの

鼻が高い方が良いだのと

自分の顔とにらめっこしては

足りない部分を挙げていたけれど

顔の作りは授かりもの

どう足掻いても受け入れるしかない


そして気づくことは

美しいといわれる女性たちが

必ずしも端整な顔立ちをしているわけではない

ということ


内面は外見に表れる

笑顔が常に晴れやかで美しい女性は

中身も曇りがなく清々しい


そう思うと

美しい人

つまり美は

自分次第で

誰にでも手に入れられるはずなのだ


私がこれまでに出会った美しい人の共通点は

姿勢が正しく

いつも穏やかで

言葉遣いや所作はもちろん

手書きの文字まで美しい


そして極め付けは

立ち去った後にふんわり残る

良い香りである


残り香というのは

端正な顔立ちより

より鮮明に印象を残す


美人は一日にして成らず


まずは

自分に合う香りを見つけなければならない


香水といえば

やはり

CHANEL N°5


慣れない化粧品売り場へ行き

その香りを試してみる


なんだろう

イメージは自分に都合よく

勝手に美化されているもの

長年の妄想はあっさり撃沈した


それからは

様々な香水を試してみた


ひとことで

バラの香りといっても

いわゆる甘い香りでなく

茎の青々とした爽やかですっきりした香りもある


何につけ

極めようと思えば奥が深い


さらに香水というのは

付けた人の体温と時間により

香りが変化していくもの


そんな複雑なものを

オリジナルとして極めようなんて

容易ではない


なかなか

しっくりくる香水を見つけられないまま

過ごしていた頃

知人から

メンズに向けて作られたものだが

私に合うのではないかと

CREEDのOriginal Vetiverを紹介してもらった


Vetiverとはイネ科の植物で

多くの香水のベースノートとして使用されている

CHANEL N°5 のベースノートでもあるというから

より興味深い


そこにベルガモットやマンダリンが加わり

爽やかな香りがなんとも心地よく

自分らしいのではないかと

愛用するようになった


服を選ぶように

シーンによって香水を使い分けるなど

私にはまだまだ先の話だけれど

香りを身近に

そして味方に出来たら

女の人生

ちょっと厚みが増すような気がしている


h.

#034 Hermès Handkerchief

Boudoir de BdT


子供の頃から

ハンカチが大好きで

ハンカチ用の引き出しが閉まらなくなるほど

たくさん持っていた


今でも

デパートや買い物に出かけると

必ずハンカチ売り場に立ち寄ってしまう


しかし無意識に増えていくハンカチに

大人になってからというもの

これだ!と思うもの以外

買わないよう努めてきた


ある時

ふらっと立ち寄ったエルメスの路面店で

何気なく覗いてしまったショーケース

中には

色合いの綺麗なハンカチがディスプレイされていた


スタッフの方に声をかけていただき

うっかり

広げて見せてもらってしまった


これまで見たことのあった

エルメスのハンカチは

もっとシンプルで王道なデザインだったので

広げた瞬間

喉から手が飛び出しそうな勢いだった


しかし

これまで私が愛用してきたハンカチとは

どう頑張っても桁違い


喉から出る手を必死で抑えながら

少し熱を覚まそうと

一回店を出た


ふらふらとウインドーショッピングをしながら

本当に必要なのか

珍しく自問自答を繰り返してみる


20分くらいして

そろそろ自問自答にも飽きてきた頃

あっさり物欲に負け

エルメスに戻っていた


さて

このエルメスのハンカチ

額に飾るわけでもなく

実用品である


家に持ち帰ってじっくり眺めてみる

ホクホクした気持ちの裏側に

ざわざわしたものが顔をのぞかせる


自分史上最高級のハンカチ

手も汗も

気軽に拭けやしない


そういえば

ロバートデニーロが

「ハンカチは貸すために必要なんだ

女性が泣いた時にそっと差し出せるように」

と言っていた


もちろん映画の中での台詞


だけど

そんな考え方が出来たら

間違いなくかっこいい


友人の涙にエルメスのハンカチは

不要だろうが

自分の手を拭くためではなく

他人に貸すために

そんな理由にかこつけてみるのも

アリではないだろうか


言いわけが用意できた途端

ものすごく高貴な買い物をした気分になった


エルメスのハンカチは

シルクのような

コットンとは思えない質感


だからか

アイロンを掛けると

ノリが効いているかのように

シャンと元に戻る


アイロンを掛ける作業は

シワや折り目のついた布が

生き返るようで幸せな気持ちになる


そして

アイロンの掛かったハンカチや衣類は

言うまでもなく

私たちを幸せにしてくれる


誰に知られることはなくても

いつかの出番のために

シャンとしたハンカチを

そっと忍ばせておこうと思う


h.