Boudoir de BdT

#006 Ann Demeulemeester Asymmetry Knit

Boudoir de BdT


20代始め 初任給でまず買いにいったものは

ANN DEMEULEMEESTERのニットだった


ANNの服を買えた日は

BGMが流れそうなほど

はじめてのおつかい 気分だった


思えば その頃から

ANNといえば

アシンメトリーに ウエストの紐

この紐により シルエットを意図的に変形させることができる


最初 その紐の扱いに苦労した

絞りすぎたり

左右反対に結んで うまくドレープが寄らなかったり

紐に振り回されながら

自分なりの着方を覚えていった


オフの日にこのニットを着られることが楽しみで

それはそれは丁寧に扱い

間違いなく 10年選手代表のはずだった


数年経ったある日

ふと 手洗いを試みた


特に何の問題もない様子で洗われたニットを

鼻歌交じりに乾かす

乾いた頃 その様子を見に行った私は

目を疑った


ただでさえ長かった袖は さらに長くなり

トップスだった着丈も チュニック化

ダランダランになった

お化けのようなニットがそこにいた


そう なにを思ったか

ハンガーにかけて干したのだ

若いとはいえ

二十歳を過ぎた女性の洗濯・・


ニットは平干ししましょう


当時の私の引き出しには存在していなかったのか


この瞬間 10年選手から脱落

いや

このお化け

デザイン違いだと思い込んで 着れやしないか


そうしてまず不要になったのが ウエストの紐

伸びきったニットに ドレープは出ない

デザインて なんて計算されているんだろう と感動し

失敗から学んだことは大きかった


とはいえ

どう試行錯誤して着ようとも

伸びきっている

ここで選手生命が絶たれるとは

申し訳ない気持ちでいっぱいになった


当然

捨てられるはずもない そのニットは

毎年その時期が来ると

今年こそ 着られるのではないかと

鏡の前で試着

年に一度の恒例儀式のようになった


断捨離ブームも定着した今 確かに

不必要なものは手放すべき

でも

捨てられないモノがあっていいと思う


それ以来

ANNの新人選手は 増えていくばかりだけど

一番 愛着のある一枚かもしれない


h.

#005 Haider Ackermann Shirt

Boudoir de BdT


メンズのような サイズ感

なのに袖を通すと

落ちる布 そのドレープにより

より女性らしく 凛とした表情を与えてくれる


大抵 買付けの際

自分が一目惚れしたものほど 売れ残ったりする

このシャツも例外ではなかった


嫁に行きそびれたシャツを引き取り

着て 洗う を繰り返す


私が学生の頃 山本耀司さんが

真新しいシルクの服を洗濯機で何度か洗うと

着古したような質感になる

そうしてシルクを着るのが好きだ と仰っていた


それ わかる


さすがに洗濯機でガンガン洗うことはできなかったけど

何度も手洗いを繰り返すと

ぬったりとした 

最初とは明らかに違う 素材感

テカテカしていたカーキ色も どんどん白っちゃけ

実際 いいのか悪いのか


でも 

布好きにとっては たまらない

数年経った今

より 自分のものになった感じ


服にも味が出てくる

味もヨレも 紙一重かもしれない

でも 自分が好きならそれでいい


大人になり

あんまりボロは身につけられなくなったけど

いつまでも味のある服を 身に纏っていたいし

その服に着られてしまうことのない

人間でありたい


h.

#004 Hermès Kelly

Boudoir de BdT


女性だったら一度は憧れるだろう

バーキンや ケリー


ステッカーをいっぱい貼って ガンガン物を入れ

乱雑に扱う感じ

私もいずれ バーキンを蹴飛ばす勢いで使ってやる

と 心に誓っていた


しかし バーキンを目の前に 若かった私は

バーキンの華やかさ に尻込みした


名前の由来からも

ケリーの方が 恐れ多い気がしていたのに

合わせてみると

なぜか しっくりきた


なにかの節目に というわけではなく

いつものように 都合の良い出会い にかこつけ

自分の元へ連れてきた


気品漂うケリーバッグ

自分とバッグとの釣り合い が気になり

いかに 普通に使ってます感 を漂わせるか

恐る恐るも がしがし扱ってみる


ある時

とてもよい塩梅に くたびれたケリーを待つ女性と出会った

前のめり気味に くたびれた経緯を伺ってみると

エルメスの高級レザーは ワンちゃんも大好物

ワンちゃんの手の届くところに置いたもんには

ガブガブと 美味しそうにかじってしまうそう


私がどんだけ乱雑に扱っても

ワンコのかじりに 勝てるはずもなかった 


そんな時 パリのマーケットで出会った

ぼろっぼろのケリーバッグ

程よいサイズに 綺麗なダークグリーンのレザー


実際どうしたら エルメスがこうなるのか

何匹のワンコのおやつになれば こうなるのか

先日の女性のものとは 比にならないほどボロボロだった

それでも 私には宝物に見えた


持ち手も外れそうなほどの ケリーバッグを

迷いに迷った挙句

結局 連れて帰ることができなかった

なのに

その おんぼろケリーを 今でも思い出す


年月が経つと

おんぼろバッグすら

綺麗な思い出になるのかもしれない


良い人の元で 元気に活躍していますように


h.

#003 Mickey Mouse Watch

Boudoir de BdT


いつだったろう

昭和天皇が ミッキーマウスの腕時計をされている

記事を発見した

ジャケットの袖から見える ミッキーマウスの腕時計


その記事によると

アメリカご旅行の際 ディズニーランドで

記念にいただいたものらしい

その後は

普段の日も ご自身で選ばれて身につけるほど

ご愛用されていたとか


天皇陛下が!

いや おじいちゃんが!(ごめんなさい)

スーツ姿にミッキーマウスの腕時計!

そんなギャップに憧れ

ミッキーマウスの 腕時計探しの旅 が始まった


ロンドンのエンジェルで行われるアンティークマーケットから

ふらりと入った路地の 小さなアンティークショップ

そのウィンドウをのぞくと

ミッキーマウスの腕時計を発見!!


覚悟していたわりに あっさり出会ってしまった


そのせいか ひとつ手に入れたことを きっかけに

出会えばまた喜んで連れて帰る ミッキーマウス

そしていつからか 腕時計に限らず

アンティークのミッキーマウスを見れば

連れて帰るという始末


ねじまき式の腕時計は ゆっくりネジを巻くと

カチカチカチ

なんとも言えない 心地よい音で動き出してくれる

身につけている人の生活により

秒針が 早くなったり 遅くなったり

本当に 共に生活しているよう


私の腕時計たちは この買い物道楽ぶりに

呆れ返っているに違いない


h.

#002 Burberry Trench Coat

Boudoir de BdT


ロンドンのマーケットで出会った バーバリーのトレンチコート


トレンチコートに憧れ始めた 20代前半

真新しいものを身につけることに 抵抗があった私は

トレンチコートに 着られることなく着こなしたい

という思いから ビンテージを探し始めた


そんな折 バイヤーとして

ロンドン出張へ行くことが決まった


トレンチコートといえば バーバリー

バーバリーといえば イギリス

ということで これは願ってもないチャンス!


出張時には マーケットや古着屋で

ありとあらゆるトレンチを試着し

ようやく自分の身体にしっくりくるサイズを見つけた時は

まさに 宝探しをやりきった気分


そして トレンチにも満たされていた数年後

都内のあるセレクトショップで

バーバリーのキッズサイズのトレンチが

ディスプレイされているのを 見つけた

ぜひそれを試着させて欲しい!と 興奮気味にお願いすると

『あちらは大変貴重なものなため 売り物ではないんです』

と 感じ良く あっさり断られた

落胆が高速過ぎて クラクラした


その後 今度はキッズ用のトレンチを絶対見つけてやる!

と 探し回り

諦めかけた 何度目かの出張で見つけた時には

ガッツポーズをしたほど


服も なにかと同じで

躍起になっている時には 大抵見つからず

力を抜いたタイミングで ふと出会えたりする


h.